「面白い」「感動」では語りきれない この世界の片隅に

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いわゆる、戦争映画が嫌いです。どうしても押し付けがましい作者のメッセージというものが見えてしまって、それを伝える手段として戦争を利用しているように感じてしまうから。
それでも、「この世界の片隅に」は自然と受け入れることができました。それは戦時中の生活を主題としていて、どのセリフもその登場人物から出た言葉に聞こえたからだと思います。

ほのぼのとした笑いがたくさん散りばめられていて楽しく見れるだけ、誰もが知っている結末に徐々に向かっていく辛さや現実の理不尽さが襲ってきます。それでも生活を続け、幸せを見つける人間の強さに感動し力をもらえる映画です。「面白い」とか「感動した」とかでは表現できない名作だと思います。

キャスト配役も見事でした。特に主役すずの声を演じた能年玲奈ことのん。彼女のとぼけた明るさは緊迫した状況でも周囲を和ませるキャラクターにぴったりでした。この人間性がこの映画最大の特徴であり救いだったと思います。
コトリンゴの音楽も、悲しく優しい映画の世界に合っていました。ストリングスが素晴らしいと思っていたらエンドクレジットで徳澤青弦さんの名前が。(ラーメンズ、小林賢太郎作品でも活躍されています。)

イメージしていたよりテンポが良かったのもいいアクセントになっていました。まったり進んでいるように見えて1エピソード1,2分で切り上げているのですが、その中にほのぼのとした笑いと深く考えさせられるセリフが必ずあります。そのセリフがどれも直接的ではないのに刺さるものばかりで、かといって製作者のメッセージの押し付けでもないところが好きなのだと思います。

中盤からはずっとうるうるしながら見ていましたが、最後のエンドロールにまでうるうるしてしまいました。クラウドファンディングで制作費を募っていたようで、その人数の多さ。人と人のつながりが重要な映画だっただけにこれだけの支えがあった映画だと思うと、ストーリーを飛び越え泣けます。

普段の生活に気合が入らないという方は観に行ってみるといいと思います。何があっても前向きに生きる人々の姿から何かを感じるはずです。